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鉦屋きとりの自宅的な何か。銀雨、で判らない人には痛いだけの空間。
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これは果たしてこだわりなのか…
蛙の子は蛙。馬鹿の子は馬鹿と。

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choosey guy


「…弱い」
 自室で一人、きとりは広げた己の両手を見つめながら呟いた。
 何が、と問われれば、「チカラ」と答えるだろう。
 今まで如何にぬくぬくと他人に守られて生きてきたのかが良く判る。大樹の下から離れた時、きとりは余りにも脆弱な一個の「弱者」だった。
 ゴーストタウンという戦いの場において、きとりは初めてそれを思い知る。 勿論、同行してくれたメンバーは仲間を見捨てたりはしないし、危機に陥れば助けてくれた。何度、その強靭な一閃に命を救われただろうか。その救援を考慮に入れるなら、その場はきとりにとって大した「危機」ではない。
 しかし、と、きとりは息を吐く。
 他人の血と傷痕で作られた安楽の鞍に、安穏として座するのを良しとしない自分がいる。それは被守護者の傲慢かもしれない。そんな下らない自尊心が我が身や仲間を危険に晒す事もある。それでも、そんな牛馬の足下にでも置くべき取るに足らない自尊心でも、きとりの矜持を保つ為には必要だ。
 安楽の鞍を降り、且つ何をも危険に晒さぬ様にせねばならない。自尊心と実力の間に溝を作らぬ事だ。
「背に腹は変えられない…なりふり構ってられません、か」
 ふわふわとした髪を乱暴にかき回しながら呟き、きとりは立ち上がった。

 外から見るゴーストタウンは、ただの廃墟だ。廃墟の時点で「ただの」では無い気もするが、一般的な建物に見えるという点で。しかし、中は違う。ゴーストが群成して待っている。獲物が掛かるのを。
 建物の目の前までやってくると、きとりは装備を整えて一つ頷いた。今日は一人だ。一人で行ける所まで行く。ヤバイと思ったら戻ればいい。急激な進化など求めるべくも無い。少しずつで良い。底の見えない井戸でも、砂で埋める事が出来る。
 頼りの武器の錫杖を肩に凭せ掛けて、きとりは一歩を踏み出した。そして、
「あれっ?」
 朽ち掛けた扉から中を覗いて、思わず場にそぐわぬ頓狂な声を上げる。
 そこに、予想だにしなかったものを見つけたからだ。きょとんと目を見開いて、ついついそれを指で指す。
「とうさんー!?」
 それは、いつものように黒尽くめで杖を片手に煙草を咥えた、とうさんだった。何でこんな所にと言いそうになって、彼も能力者だったと思い直す。
 とうさんは、突然の人の声にきとりの方へ目をやり…次の瞬間、ぶほっとおかしな音をたてて煙草を噴出した。サングラスの所為で確認は出来ないが、激しい動揺に目が泳いでいるように見受けられる。
 放心したように口を二、三度ぱくぱくと動かした後、彼は大股でつかつかときとりに歩み寄り、その右手を取るとその身体を手近の壁へ強く押し付けた。
「ひぁ!?」
 きとりが壁に押し付けられた衝撃と驚きに目を瞬かせる。とうさんはきとりを上から覗き込むように見下ろした。
「きとり…お前なぁ…」
 目の表情こそ伺えないが、口元が引き攣ってる辺りからして、機嫌が良さそうではない。そうしてきとりを見据えながら、片手できとりを押さえたまま、空いた手できとりの頭に所謂カチュウシャ状に装着されているものを指差す。
「お前、これ何だ」
「え…詠唱眼鏡…?」
 驚きと少しの怯えで半笑いになりながら、きとりは答える。続けて、とうさんがその下…きとりの顔面を指差した。
「これは」
「私の眼鏡……」
 きとりが答えると、とうさんは詠唱眼鏡ときとり自身の眼鏡の間、額に当たる所を指差した。
「これは!」
「さ、サングラスです!」
 とうさんの張り上げた声に思わず敬語で応える。とうさんは3秒ほど黙った。
「じゃあ、その着てるもんは」
「メイド服…じゃないかな」
「ずるずる引き摺ってんのは」
「振袖…ですね」
「背中に背負ってんのは」
「サーフボードです…」
「そのサーフボードにくくり付けてあるコレは!」
「釣竿です!」
「お前は何処に行く気だーーーッ!?」
「ラブホテルですーーーーっ!!」

 余りにも無益なその問答が済むと、とうさんはまた3秒ほど沈黙してから、溜息と共にきとりの頭をぺんっと軽く叩いた。
「あいたっ」
「あいたじゃねえ、お前二度とその格好で出歩くな」
 叩かれた頭を両手で押さえていたきとりが不満げに顔を上げる。
「何で?」
「なんで?何でと聞くか。俺が聞きたいわ何だその格好!」
 何だと問われてきとりは胸を張る。
「私の戦闘スタイル」
「威張るな!」
 またしてもとうさんの平手がぺんっとヒットする。
「何の戦闘だ海辺のマニアックメイド大会か!全日本高架下の有名人選手権か!!」
「ゴーストタウンでのリアル戦闘スタイルだよ!」
「むしろお前がゴーストだ!!!」
 三度、きとりの頭がぺんと音を立てた。
「そんなぺんぺん叩いたら馬鹿になる!」
「今のお前はどっから見ても充分馬鹿だっ!!」
 とうさんは、うぅと呻くきとりに溜息と共に首を振って見せる。
「あのな。男っつうのはこだわりくれえ持ってねえとな」
「こだわり…」
「ああ、こだわりだ。譲れねえもんがあるって事ぁ、強さに繋がるもんだぜ」
 にっと笑って見せるとうさんに、きとりは尋ねた。
「とうさんも?」
「ああ。俺のこだわりは極上だ」
 そう言うと、とうさんはきとりを離し踵を返す。そのまま、きとりを背に廃墟の奥へと歩いて行きながら、詠唱兵器を身に纏った。
 それを見た瞬間、きとりはびくうっと身体を震わせ、次いで膝から頽れるように床へへたり込む。
 それは確かに凄まじかった。
 全身を彩る白は、返り血すら浴びぬ自信からだろうか。その白の中に薄赤いアクセントとして腰に巻かれ垂れ下がる布。後ろで結ばれたその先端の結び目さえも整然と形作られている。首元には赤い赤い美しく結ばれた、最早完璧としか言いようの無い、リボン。片手にはワイングラスを持って。頭上にはふわふわと優雅に揺れる、耳。
 エプロンとリボンで飾られ、完全に統制の取れた、真っ白なウサギの着ぐるみ姿。
 ふかふかの手で握られた日本刀の一閃でゴーストを薙倒しつつ、威風堂々と歩いていくその後姿を呆然と見つめて、きとりは呟いた。
「これが……こだわり……」
 こうしてまた一つ、きとりの頭に何かが間違った知識が刻まれた事を、とうさんは知らない。

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あとがき@はいご

元々、装備とかを馬鹿な方向にこだわるのが好きな馬鹿背後です。
でも、きとりがあまりこだわって装備を選ばない為、物足りない日々です。
ファーストの人はあんなにこだわり屋さんなのに。
ええ、そうですよ、二人目ですよきとりは。妾ですよ(違う)
とか言って、バレバレのようですが(笑)
ええ、ええ、ウサギ様ですよ←何だその暴露の仕方

そんな訳で、きとり装備こだわりフラグを立ててみる←フラグとか言わない
ウサギ様の血脈。

でも、きとりがどういうこだわりを持つか判らない…←おい背後!
とりあえず、まずははいごの趣味で白衣装備ですが。
意味もなく白衣着てる設定が好きなので(おいって)
変な改造白衣を着せてみたいです。

ところで、その変な改造白衣を作る為に「妖霊星」という言葉で
検索をかけたら、好きな作家さんの読んだ事の無い本がヒットして
今ちょっと幸せです←どうでもいい

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鉦屋 きとり
性別:
男性
自己紹介:
銀雨でひっそりヘリオンうっかりウサギ。

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