鉦屋きとりの自宅的な何か。銀雨、で判らない人には痛いだけの空間。
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タンポポの英名(だっけ?)はダンデライオンだそうです。
ダンディライオンだったら何か違うものを想像して萌えます←
ダンディライオンだったら何か違うものを想像して萌えます←
+++++++++++++++++++++++++++
ライオンとタンポポ
マンションの入り口の扉がガタリと音を立てて閉まるのをいつもの癖で見届けてから路上へ目を向けて、きとりはぱっと顔を輝かせた。ランドセルを背負い直して、一目散に路上の人影へ駆け寄る。
「あれー?とうさん、どうしたの?」
きとりより30センチ以上背の高いとうさんの顔を、殆ど真上を向くようにして見上げた。
「おう。ちょっと、こっちに用があったんでな。学校か?」
とうさんは杖を持った手できとりの頭を軽く撫でると、顎で学校の方角を指す。歩けと言う事だろうと察して、きとりはとうさんの、空いた方の手を握ると並んで歩き出した。
「学校面白いか」
「面白いよ。昼休みによく鬼ごっこするんだ。何かずっと私が鬼だけど。あと、こないだ何でか近藤君が私の上履き持ってたんだよ。どこ行っちゃったかと思った。間違えないよねえ、普通。面白かったー」
にこにこしながら学校生活の報告をするきとりに、とうさんが一瞬立ち止まる。サングラス越しでも判るくらい複雑な顔をしてきとりを見下ろすのを、きとりは不思議そうに見上げた。
「……それは…もしかして、イジ………いや、まあ、お前が面白いんなら、良い…のか?」
ひどく複雑な顔のまま、帰ったら相談するか、等とぼそぼそ呟きつつ、とうさんはまた歩き出す。
「なんかダメだった?」
学校で行われている事よりも、とうさんに否定される事の方を恐れるように、きとりはおずおずと尋ねた。
「…や、駄目じゃない…多分」
駄目じゃない、いや駄目か?駄目じゃないよなときとりに答えつつも延々自問自答するとうさんの手が不意に後ろへ引かれる。見れば、手を繋いでいるきとりが立ち止まってしまっていた。視線が、今通り過ぎた交差点の電信柱へ注がれている。
「きとり?」
声をかけても、振り向かない。時折猫などがするように、じっと空間を見つめた視線がすうっと何も無い所を動いて行った。とうさんもサングラスを外して、そちらへ目を凝らす。
女が立っていた。ただの女ではない。頭の片側がざっくり抉れている。到底生きているとは思えない。
「おい、きとり」
サングラスをかけ直して、とうさんは繋いだ手をぐいと引いた。あの女には敵意のような物は感じられなく、ただ呆然と立っているようだ。恐らく、そこで事故にでもあって死んだものの、状況も理解できていない地縛霊だろう。害は無い。今の所は。
降りかかっていない小さな火の粉をわざわざ始末してやる程、とうさんも暇ではない。
「きとり!」
手を引いても、女から目を離さないきとりに、少し語気を荒げる。きとりが、はっと振り向いた。
目が合う。その目に、とうさんは眉を寄せた。
通常の人の姿をしていないモノを見て、怯えているのではない。驚いているのでもない。興奮したように見張った目を輝かせていた。
「おい」
きとりの、両手ですっぽり覆えてしまう小さな頭を両手で掴んで引き寄せ、腰を屈める。
「あれは、面白くない」
物言いたげに、目を先程の女へ向けようとするきとりの頭を自分の方へ向けさせて、とうさんはもう一度言う。
「面白くない」
物言いたげな目が、今度はとうさんを見る。それを見つめ返し、さらに繰り返す。
「面白くない」
きとりは暫くとうさんの顔を見つめていたが、やがて観念したように呟いた。
「…面白くない」
とうさんが満足げに頷き、きとりの頭を軽く撫でる。きとりは微かに笑みを浮かべてとうさんを見上げ、元のように手を繋いだ。
そのまま歩き出したが、さっきの今で途切れてしまった会話に、きとりは居心地悪げにきょろきょろと周りを見回している。とうさんも話題が作れないようで、前を向いたままただただ歩を進める。
そうして、だいぶ歩いた所で、きとりがあっと声を上げた。
「たんぽぽ」
立ち止まったきとりに、とうさんも足を止める。道端にタンポポが咲いていた。
「ああ、タンポポだな。もうそんな季節か」
「たんぽぽって英語でダンデライオンって言うんだよ」
最近仕入れた知識なのか、きとりが妙に胸を張って言う。
「ダンディーライオン?」
「ダンデライオン。フランス語でライオンの歯って意味」
「そんなんがべらべら出てくる小学生もなんか気持ち悪ぃな」
そう笑いながらも、とうさんはきとりの頭を撫でてくれる。
「そういや、昔そんな名前の歌があったなぁ」
「どんな歌?」
きとりが問うと、とうさんは眉間に皺を寄せながら暫く考えて答えた。
「確か、ライオンがタンポポと友達になる歌だな」
きとりがきょとんと首を傾げる。
「無理だよ?」
「お前な…もうちょっと子供らしく空想しろよ」
溜息をつきながら、またきとりの手を引いて歩き出す。
「うー…じゃあ、友達になれると仮定して」
「仮定とか言うな、ガキが」
「…じゃあ、友達になったとして、どうなるの?」
きとりが促せば、とうさんはまた眉間に皺を寄せる。
「何だっけな…プレゼントとかすんだ、タンポポに。雨の日とかに」
「タンポポはどうするの?」
「タンポポは……何もしねえな」
「じゃあ、ライオンはどうなるの?」
ふっと、とうさんがきとりを見つめた。問いを発したきとりは首を傾げる。
「……忘れたな」
そう言うと、とうさんはきとりの手を離した。
「着いたぜ」
その言葉に前を見れば、すぐそこにきとりの通う小学校がある。
「うん。じゃあ、とうさん、またね」
きとりが手を振って、校門へと走り去った。その後ろ姿を手を上げて見送る。
やがて、きとりの姿が完全に見えなくなると、とうさんは踵を返した。歩き出そうとして、思いついた様に一度振り返る。
さっき思い出した歌の歌詞が脳裏を過ぎった。確か、ライオンがタンポポに言う台詞だ。
「お前を泣かすものか」
その台詞を小さく呟いて、とうさんはコートを翻した。
+++++++++++++++++++++++++++
あとがき@はいご
バンプのダンデライオンです。
この曲を聴くと、背後は90%の確率で泣きます。
カラオケで歌いながら泣きます←おかしい
また思いつき殴り書きSSですが。
なんだこれは、とうさんのきとり溺愛SSですか。
それとも、きとりの変態カミングアウトSSですか。
幽霊見て興奮する小学生っておかしいよ←お前が言うな
誰か言ってやってください。君は変態ですと←お前が言え
ライオンとタンポポ
マンションの入り口の扉がガタリと音を立てて閉まるのをいつもの癖で見届けてから路上へ目を向けて、きとりはぱっと顔を輝かせた。ランドセルを背負い直して、一目散に路上の人影へ駆け寄る。
「あれー?とうさん、どうしたの?」
きとりより30センチ以上背の高いとうさんの顔を、殆ど真上を向くようにして見上げた。
「おう。ちょっと、こっちに用があったんでな。学校か?」
とうさんは杖を持った手できとりの頭を軽く撫でると、顎で学校の方角を指す。歩けと言う事だろうと察して、きとりはとうさんの、空いた方の手を握ると並んで歩き出した。
「学校面白いか」
「面白いよ。昼休みによく鬼ごっこするんだ。何かずっと私が鬼だけど。あと、こないだ何でか近藤君が私の上履き持ってたんだよ。どこ行っちゃったかと思った。間違えないよねえ、普通。面白かったー」
にこにこしながら学校生活の報告をするきとりに、とうさんが一瞬立ち止まる。サングラス越しでも判るくらい複雑な顔をしてきとりを見下ろすのを、きとりは不思議そうに見上げた。
「……それは…もしかして、イジ………いや、まあ、お前が面白いんなら、良い…のか?」
ひどく複雑な顔のまま、帰ったら相談するか、等とぼそぼそ呟きつつ、とうさんはまた歩き出す。
「なんかダメだった?」
学校で行われている事よりも、とうさんに否定される事の方を恐れるように、きとりはおずおずと尋ねた。
「…や、駄目じゃない…多分」
駄目じゃない、いや駄目か?駄目じゃないよなときとりに答えつつも延々自問自答するとうさんの手が不意に後ろへ引かれる。見れば、手を繋いでいるきとりが立ち止まってしまっていた。視線が、今通り過ぎた交差点の電信柱へ注がれている。
「きとり?」
声をかけても、振り向かない。時折猫などがするように、じっと空間を見つめた視線がすうっと何も無い所を動いて行った。とうさんもサングラスを外して、そちらへ目を凝らす。
女が立っていた。ただの女ではない。頭の片側がざっくり抉れている。到底生きているとは思えない。
「おい、きとり」
サングラスをかけ直して、とうさんは繋いだ手をぐいと引いた。あの女には敵意のような物は感じられなく、ただ呆然と立っているようだ。恐らく、そこで事故にでもあって死んだものの、状況も理解できていない地縛霊だろう。害は無い。今の所は。
降りかかっていない小さな火の粉をわざわざ始末してやる程、とうさんも暇ではない。
「きとり!」
手を引いても、女から目を離さないきとりに、少し語気を荒げる。きとりが、はっと振り向いた。
目が合う。その目に、とうさんは眉を寄せた。
通常の人の姿をしていないモノを見て、怯えているのではない。驚いているのでもない。興奮したように見張った目を輝かせていた。
「おい」
きとりの、両手ですっぽり覆えてしまう小さな頭を両手で掴んで引き寄せ、腰を屈める。
「あれは、面白くない」
物言いたげに、目を先程の女へ向けようとするきとりの頭を自分の方へ向けさせて、とうさんはもう一度言う。
「面白くない」
物言いたげな目が、今度はとうさんを見る。それを見つめ返し、さらに繰り返す。
「面白くない」
きとりは暫くとうさんの顔を見つめていたが、やがて観念したように呟いた。
「…面白くない」
とうさんが満足げに頷き、きとりの頭を軽く撫でる。きとりは微かに笑みを浮かべてとうさんを見上げ、元のように手を繋いだ。
そのまま歩き出したが、さっきの今で途切れてしまった会話に、きとりは居心地悪げにきょろきょろと周りを見回している。とうさんも話題が作れないようで、前を向いたままただただ歩を進める。
そうして、だいぶ歩いた所で、きとりがあっと声を上げた。
「たんぽぽ」
立ち止まったきとりに、とうさんも足を止める。道端にタンポポが咲いていた。
「ああ、タンポポだな。もうそんな季節か」
「たんぽぽって英語でダンデライオンって言うんだよ」
最近仕入れた知識なのか、きとりが妙に胸を張って言う。
「ダンディーライオン?」
「ダンデライオン。フランス語でライオンの歯って意味」
「そんなんがべらべら出てくる小学生もなんか気持ち悪ぃな」
そう笑いながらも、とうさんはきとりの頭を撫でてくれる。
「そういや、昔そんな名前の歌があったなぁ」
「どんな歌?」
きとりが問うと、とうさんは眉間に皺を寄せながら暫く考えて答えた。
「確か、ライオンがタンポポと友達になる歌だな」
きとりがきょとんと首を傾げる。
「無理だよ?」
「お前な…もうちょっと子供らしく空想しろよ」
溜息をつきながら、またきとりの手を引いて歩き出す。
「うー…じゃあ、友達になれると仮定して」
「仮定とか言うな、ガキが」
「…じゃあ、友達になったとして、どうなるの?」
きとりが促せば、とうさんはまた眉間に皺を寄せる。
「何だっけな…プレゼントとかすんだ、タンポポに。雨の日とかに」
「タンポポはどうするの?」
「タンポポは……何もしねえな」
「じゃあ、ライオンはどうなるの?」
ふっと、とうさんがきとりを見つめた。問いを発したきとりは首を傾げる。
「……忘れたな」
そう言うと、とうさんはきとりの手を離した。
「着いたぜ」
その言葉に前を見れば、すぐそこにきとりの通う小学校がある。
「うん。じゃあ、とうさん、またね」
きとりが手を振って、校門へと走り去った。その後ろ姿を手を上げて見送る。
やがて、きとりの姿が完全に見えなくなると、とうさんは踵を返した。歩き出そうとして、思いついた様に一度振り返る。
さっき思い出した歌の歌詞が脳裏を過ぎった。確か、ライオンがタンポポに言う台詞だ。
「お前を泣かすものか」
その台詞を小さく呟いて、とうさんはコートを翻した。
+++++++++++++++++++++++++++
あとがき@はいご
バンプのダンデライオンです。
この曲を聴くと、背後は90%の確率で泣きます。
カラオケで歌いながら泣きます←おかしい
また思いつき殴り書きSSですが。
なんだこれは、とうさんのきとり溺愛SSですか。
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